カメラ

過焦点距離の計算

近景と遠景、両方にピントが合った写真を撮りたい。

そんなときに、「過焦点距離」の知識が役に立ちます。

過焦点距離は、そのような写真を撮る際の手助けとなります。

 

 

被写界深度

カメラから被写体までの距離を「被写体距離」とよびます(Fig.1 参照)。

まず、被写体にピントを合わせます。

  • 被写体距離ではピントが合っている

 

Fig.1 Depth of field

 

被写体にピントを合わせたとき、被写体の前後方向に、ピントが合う範囲があることが分かります。

前後方向とは、以下の意味です。

  • 前方向: カメラから見て、被写体の手前側
  • 後方向: カメラから見て、被写体の奥側

 

被写体の前後にあるピントの合っている範囲を「被写界深度」とよびます(Fig.1 参照)。

被写界深度の手前側を「前方被写界深度」、奥側を「後方被写界深度」とよびます(Fig.1 参照)。

 

 

被写界深度は計算で求めることができます。

前方被写界深度、後方被写界深度は次式で与えられます。

 

 

ここで、δは許容錯乱円径、FはF値、Lは被写体距離、fは焦点距離です。

許容錯乱円径については、前回記事(許容錯乱円)をご参照ください。

 

 

 

過焦点距離

過焦点距離は、後方被写界深度が無限大(∞)となるときの最短被写体距離です。

後方被写界深度は式(2) で与えられます。

式(2) が∞となるのは、式(2) の分母が0(ゼロ)のときです。

 

上式を変形して、過焦点距離(L)は以下となります。

 

 

式(4) を式(1) に代入すると、次式が導かれます。

 

以上をまとめると、過焦点距離をと書くと、以下となります。

ここで、fは焦点距離、δは許容錯乱円径、FはF値です。

 

 

過焦点距離の計算例

各カメラに対して、式(6)、(7)、(8) を用いて「過焦点距離」を計算しました。

焦点距離f は 18mm とし、許容錯乱円径は前回記事(許容錯乱円)で計算した値を用いました。

 

 

表中の背景色が薄水色の値は、許容錯乱円が画素ピッチの場合の値です。

ピントは鮮明で、このピントは撮像素子の性能限界です。

 

 

表中の背景色が薄黄色の値は、許容錯乱円がエアリーディスク径の場合の値です。

F値を上げた影響で、ピントは少しボケてきます(小絞りボケ)。

しかし、F値が16でも許容錯乱円径は、10.35μm(0.01nm)程度なので、ボケは目立ちません。

 

 

(1) Nikon D5500

 

d5500-hyper-focal-length

 

 

(2) Canon EOS 5D

 

eos5d-hyper-focal-length

 

 

(3) OLYMPUS E-500

 

e500-hyper-focal-length

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