カメラ

パンフォーカスの計算

遠くにある山と近くにある花、これらを一枚の写真に鮮明に撮りたい。
こんなとき、近くの花にピントを合わせると遠くの山はボケてしまいます。遠くの山にピントを合わせると近くの花はボケてしまいます。
パンフォーカスとよばれる手法を用いることで、近くの花と遠くの山の両方にピントがあった写真を撮ることができます。

 

過焦点距離

パンフォーカスの写真を撮る前提条件として、「被写体距離が過焦点距離以上である」があります。

 

 

(注)被写体距離とは、カメラからピントを合わせる被写体までの距離のことです。

(注)過焦点距離については、前回の記事(過焦点距離の計算)をご参照ください。

 

過焦点距離は、撮影に使用するレンズの焦点距離(f)やカメラの絞り(F値)などから計算できます。

 

パンフォーカス

一般に、カメラの絞り(F値)を絞る(大きくする)ことで、過焦点距離を小さくすることができます。

式(1) より、過焦点距離を小さくできれば、被写体距離も小さくできることが分かります。

 

 

しかし、F値を大きくすることで、「エアリーディスク径」が「画素ピッチ」よりも大きくなってきます。

(注)画素ピッチについては記事(画素ピッチの計算)を、エアリーディスク径については記事(エアリーディスク径の計算)をご参照ください。

 

小絞りボケ

エアリーディスク径が大きくなることで、結像した画像のピントがボケてきます。

これは、「小絞りボケ」とよばれる現象です。
すなわち、被写体距離が過焦点距離であっても、F値が大きい場合は、パンフォーカスになっていないことになります。

ベン図にすると、以下の集合関係にあります。

 

venn-diagram

 

 

パンフォーカスの計算

パンフォーカスとなる条件は、「画像ピッチ」と「エアリーディスク径」から計算します。

 

(1) エアリーディスク径が画素ピッチより小さい

エアリーディスクによる「小絞りボケ」は発生していません。

 

 

被写体距離が過焦点距離以上であれば、撮影した写真はパンフォーカスとなります。

 

(2) エアリーディスク径が画素ピッチの2倍より小さい

エアリーディスクによる「小絞りボケ」が効き始めています。まだ、エアリーディスク径が、Bayer配列の分解能程度なので、Raw現像処理による小絞りボケ抑制が期待できます。

 

 

被写体距離が過焦点距離以上であれば、撮影した写真は、パンフォーカスに近い状態となります。

 

(3) エアリーディスク径が画素ピッチの2倍以上

エアリーディスク径が大きくなり、「小絞りボケ」が本格化してきます。そのため、Raw現像処理による小絞りボケ抑制は期待できなくなります。

 

 

被写体距離が過焦点距離以上であっても、撮影した写真は、「小絞りボケ」によりボケています。この写真は、パンフォーカスではありません。

 

 

 

パンフォーカスの計算例

(1) Nikon D5500

以下の条件で計算しました。

  • 焦点距離: 18 (mm)
  • 撮像素子の幅: 23.5(mm)、高さ:15.6(mm)
  • 総画素数: 2,478万画素

表中の背景色は、以下の場合です。

 

表1.  Nikon D5500:焦点距離18(mm)の場合の過焦点距離(m)

d5500-pan-focus

 

 

背景色が、空色もしくは黄色ではパンフォーカスとなっています。
背景色が、橙色ではパンフォーカスではありません。

表より、被写体の色が「赤色」より「青色」の方が、パンフォーカスとなるF値の範囲が広いことが分かります。

 

(2) Canon EOS 5D

以下の条件で計算しました。

  • 焦点距離: 18 (mm)
  • 撮像素子の幅: 36.0(mm)、高さ:24.0(mm)
  • 総画素数: 3,040万画素

 

表2.  Canon EOS 5D:焦点距離18(mm)の場合の過焦点距離(m)

eos5d-pan-focus

 

 

(3) OLYMPUS E-500

以下の条件で計算しました。

  • 焦点距離: 18 (mm)
  • 撮像素子の幅: 17.3(mm)、高さ:13.0(mm)
  • 総画素数: 815万画素

 

表3.  OLYMPUS E-500:焦点距離18(mm)の場合の過焦点距離(m)

e500-pan-focus

 

 

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