接写における焦点合成
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室内で小さな花などを接写していると、焦点が合っている範囲(被写界深度)がとても浅いことに驚きます。
例えば、手前の「雄しべ」に焦点を合わせると、奥の「花びら」に焦点が合いません。
逆に、奥の「花びら」に焦点を合わせると、手前の「雄しべ」に焦点が合いません。
焦点合成という手法を用いれば、手前の「雄しべ」と奥の「花びら」の両方に焦点が合っている写真を作れます。
焦点合成(Focus stacking)
焦点合成とは、複数の画像をデジタル画像処理によって合成し、擬似的に深い被写界深度を得る技術のこと。焦点合成は、多焦点合成とか深度合成ともよばれます【注1】。
【注1】出典:Wikipedia「焦点合成」
花の例
先ほどの花の場合、先ず、2 枚の写真を撮影します。
- 写真A:手前の「雄しべ」に焦点が合っている写真
- 写真B:奥の「花びら」に焦点が合っている写真
次に、2 枚の写真(A と B)から、合成写真 C を作成します。
- 合成写真 C は、2 枚の写真(A と B)のつぎはぎです。
合成写真 C の各部分ごとに、焦点が合っている方の写真を使用します。
- 合成写真C:雄しべ部分は、写真A
- 合成写真C:花びら部分は、写真B
やっていることを、一言でいうと、以下となります。
- 2 枚の写真の、いいとこ取り
この「いいとこ取り」処理は、焦点合成ソフトウェア(Photoshop など)がやってくれます。
焦点合成の例
被写体
被写体は、「6 本の待ち針」です。
6 本の待ち針の、並びと間隔は、以下の通りです。
- 待ち針の並び:3 行 2 列
- 待ち針の間隔:行間 1 cm、列間 1 cm
それを、撮影ボックス内に置きました。
カメラ
APS-Cカメラに、標準マクロレンズを付けました。
カメラは動かないように、三脚に設置しました。
カメラの各設定は、以下の通りです。
- ISO:100
- モード:絞り優先
- F 値:16
- データ:RAW
F値
F値は、16としました。16以上だと、小絞りボケが発生します。
10以下だと、被写界深度が浅くなり、待ち針全体に焦点が合いません。
- F値 16 :被写界深度 3mm 程
- F値 10 :被写界深度 1mm 程
- F値 3.8:被写界深度 0.5mm 程
接写
写真A
先ず、前列の3 本に焦点を合わせた写真を撮ります。
具体的には、左端の球(真珠色)のライブビュー拡大画面を見ながら、マニュアルフォーカスで焦点を合わせました。
写真B
次に、後列の3 本に焦点を合わせた写真を撮ります。
具体的には、左端の球(ピンク色)のライブビュー拡大画面を見ながら、マニュアルフォーカスで焦点を合わせました。
Lightroom での処理
今回、Lightroom では、レンズ補正のみ行いました。
- 現像 – レンズ補正 – プロファイル
- 「色収差を除去」にチェック
- 「プロファイル補正を使用」にチェック
レンズ補正後の写真A と写真B を、Photoshop に持っていきます【注2】。
- 写真A と写真B を選択
- メニューバーにある「写真(P)」から、以下と辿る
- 「写真(P)」 – 「他のツールで編集(E)」 – 「Photoshop でレイヤーとして開く…」
- 写真A と写真B が、レイヤーとなり、Photoshop が起動
Photoshop での処理
2 つのレイヤー(写真A と写真B )を選択し、レイヤーを「自動整列」し、「自動合成」します【注2】。
レイヤーを自動整列
2 枚の写真を、ズレや大きさを調整し、重ね合わせます。
メニューバーの編集から、以下の手順で、辿っていきます。
- 「編集(E)」 – 「レイヤーを自動整列…」
- 「レイヤーを自動整列」画面の「投影法」で、「自動設定」を選択
レイヤーを自動合成
レイヤーの位置合わせが終わったら、次に自動合成します。
メニューバーの編集から、以下の手順で、辿っていきます。
- 「編集(E)」 – 「レイヤーを自動合成…」
- 「レイヤーを自動合成」画面の「合成方法」で、「画像をスタック」を選択
【注2】Lightroom と Photoshop での処理は、参考HPの 3. 4. 5. で、図付きで詳しく説明されています。
写真C は、写真A と写真B を自動合成したものです。
前列と後列の両方に焦点が合っています。
参考HP
- Wikipedia:焦点合成
- Wikipedia:Focus stacking
- ログカメラ:全体にバッチリピント!被写界深度合成を風景で使いこなす!
- フォトグラファーとして生きていく:多焦点合成 Focus Stackingに挑戦してみよう
- Photo Studio IS:多焦点合成を使用したジュエリーの写真について