被写界深度(前1/3・後2/3)の検証
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写真を撮るとき、被写体にカメラを向けてピントを合わせます。
そのとき、その被写体から離れた位置にある物体に、ピントは合っていません。
一方、ピントを合わせた被写体の比較的近くでは、ピントが合っています。
被写体にカメラのピントを合わせたとき、
- 被写体から離れた位置にある物体: ピントは合わない
- 被写体から比較的近くにある物体: ピントが合う
被写界深度
カメラから被写体までの距離を「被写体距離」とよびます(Fig.1 参照)
まず、被写体にカメラのピントを合わせます。
- 被写体距離で、ピントが合っている
被写体にカメラのピントを合わせたとき、被写体の前後方向に、ピントが合う範囲があります。
前後方向とは、以下の意味です。
- 前方向: カメラから見て、被写体の手前側
- 後方向: カメラから見て、被写体の奥側
被写体の前後にあるピントの合っている範囲を「被写界深度」とよびます(Fig.1 参照)。
被写界深度の手前側を「前方被写界深度」、奥側を「後方被写界深度」とよびます(Fig.1 参照)。
被写界深度(D)は、計算で求めることができます。
前方被写界深度(D1)、後方被写界深度(D2)は、次式で与えられます。
ここで、δは許容錯乱円径、FはF値、Lは被写体距離、fは焦点距離です。
許容錯乱円径については、記事(許容錯乱円の計算)をご参照ください。
被写界深度(D)は、次式となります。
前1/3・後2/3 の法則
写真撮影の際、注意事項として、「前1/3・後2/3」と言われています。
これは、後方被写界深度(D2)が、前方被写界深度(D1)の2 倍あると言うことです。
集合写真の撮影法
例えば、4 列の集合写真を撮影する場合、全員を被写界深度に収めるには、前から2 列目にピントを合わせます(Fig.2 参照)
これは、「前1/3・後2/3」法則に従った撮影法です。
- 前方被写界深度(D1) = 1/3 × 被写界深度(D)
- 後方被写界深度(D2) = 2/3 × 被写界深度(D)
前1/3・後2/3 法則の検証
まず、式(1) と式(2) を比較すると、次式の関係になっています。
ここで、等号が成り立つのは、被写体距離L = 0 のときです。
- 後方被写界深度(D2)は、前方被写界深度(D1)より大きい
次に、その大きさが、2 倍か否かを検証します。
式(1)、(2)、(3) に具体的な数値を代入します。
具体的な数値
- 焦点距離(f) : 18 mm
- F値(F) : 4
- 許容錯乱円径(δ): 3.85 μm
許容錯乱円径については、記事「許容錯乱円の計算」をご参照ください。
計算結果は、Tab.1 となります。
L は被写体距離、D1 は前方被写界深度、D2 後方被写界深度、D は被写界深度です。いずれも単位は m(メートル)です。
D1 とD2 の比(D2 / D1)を見ることで、前1/3・後2/3 法則の成立状況が分かります。
前1/3・後2/3 法則の成立
被写体距離(L)が、7 m のとき、D1 が 1.75 m 、D2 が 3.49 m で、D2 / D1 が 2.0 です。
このとき、前1/3・後2/3 法則が成り立っています。
Tab.1 中、背景色が緑色のセルでは、前1/3・後2/3 法則が大体成立しています。
- 被写体距離(L)が、4 m 〜 9 m では、前1/3・後2/3 法則が大体成立している
先ほど、例にあげた「集合写真」は、被写体距離が 4 m 〜 9 m ぐらいなので、前1/3・後2/3 法則で大丈夫です。
前1/3・後2/3 法則の破綻
以下のときに、前1/3・後2/3 法則が破綻しています(Tab.1 参照)
- 被写体距離(L) が近距離( 3 m 以下)のとき
- 被写体距離(L) が遠距離( 10 m 以上)のとき
被写体が近距離の場合、D1 とD2 は、ほぼ同じ大きさ(距離)なので、それを考慮して撮影する必要があります。
- 被写体が近いとき、D1 とD2 は、ほぼ同じ
被写体が遠距離の場合、D2 が、加速して大きくなります。
D1 と比べて、D2 はかなり大きい(距離)ことを考慮して撮影する必要があります。
- 被写体が遠いとき、D2 はかなり大きい